あほう鳥の鳴く日·Ogawa Mimei

あほう鳥の鳴く日

あほうどりのなくひ

小川 未明(Ogawa Mimei)

intermediatechildren· 1977· 青空文庫 ↗

若者は、小さいときから、両親のもとを離れました。そして諸所を流れ歩いていろいろな生活を送っていました。もはや、幾年も自分の生まれた故郷へは帰りませんでした。たとえ、それを思い出して、なつかしいと思っても、ただ生活のまにまに、その日その日を送らなければならなかったのであります。

もう、十七、八になりましたときに、彼は、ある南方の工場で働いていました。しかし、だれでもいつも健康で気持ちよく、暮らされるものではありません。この若者も病気にかかりました。

病気にかかって、いままでのように、よく働けなくなると、工場では、この若者に、金を払って雇っておくことを心よく思いませんでした。そしてとうとうある日のこと、若者に暇をやって工場から出してしまったのです。

べつに、頼るところのない若者は、やはり自ら、勤める口を探さなければなりませんでした。

彼は、それからというものは毎日、あてもなく、あちらの町こちらの町とさまよって、職を求めて歩いていました。

空の色のうす紅い、晩方のことでありました。彼は、疲れた足をひきずりながら、町の中を歩いてきますと、あちらに人がたかっていました。

何事があるのだろう?と思って、若者はその人だかりのしているそばにいってみますと、汚らしい少年をみんながとりかこんでいるのであります。

「さあ、赤い鳥を呼んでみせろ。」と、一人がいいますと、また、あちらから、

「さあ、白い鳥を呼んでみせろ!」とどなりました。

汚らしいふうをした子供は黙って立っていました。

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