学校から帰ると、お父さんが、「今年から、おまえが、年始におまわりなさい。」といって、お父さんの名刺を四枚お渡しなさった。そうだ、僕は、十二になったのだ。十二になると、お父さんのお代わりをするのか、知らないけれど、急に、自分でも大人になったような気がする。お母さんから、あいさつのしかたをならって、まずお隣からはじめることにして、出かけた。
たくさんの年賀状の中に、僕にきたのが二枚あった。川田と西山からだ。学校で、いちばん親しい二人なのだ。なぜ、僕も早く書いて出さなかったろう。もらってから、出すのでは、なんだか冷淡のような気がする。いっそ、二人のところへ訪ねてゆこうかしらんと考えたが、お正月は、めいわくだろうと思ってやめた。二枚とも、「遊びにきたまえ。」と、書いて出した。
お隣の勇ちゃんがきて、寒ぶなを釣りにいかないかと誘った。勇ちゃんは、中学の三年生だ。去年の暮れ、釣り堀へいったときに、おじいさんが、「新年は、三が日の間懸賞つきで、寒ぶなをたくさんいれますよ。」と、いったからだろう。僕、新年早々、殺生するのはいやだといったら、勇ちゃんもゆくのをよして、二人で、ボールを投げて遊んだ。