ある夏の日のこと·Ogawa Mimei

ある夏の日のこと

あるなつのひのこと

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

姉さんは、庭前のつつじの枝に、はちの巣を見つけました。

「まあ、こんなところへ巣を造って、あぶないから落としてしまおうか。」と、ほうきを持った手を抑えてためらいましたが、

「さわらなければ、なんにもしないでしょう。

せっかく造りかけた巣をこわすのもかわいそうだと考え直して、しばらく立ち止まって、一ぴきの親ばちが、わき見もせず、熱心に小さな口で、だんだんと大きくしようと、固めていくのをながめていました。そのうちに、はちはどこへか飛び去りました。なにか材料を探しにいったのでしょう、しばらくすると、またもどってきました。そして、同じようなことをうまずに繰り返していました。

「このはち一ぴきだけだろうか。

彼女は、同じ一ぴきのはちが、往ったり返ったりして、働いているのしか見なかったからです。

「勇ちゃんに、だまっていよう。

見つけたら、きっと巣を取るであろうと思いました。

姉さんは、すわって、仕事をしながら、ときどき思い出したように、日の当たる庭前を見ました。葉の黒ずんだざくろの木に、真っ赤な花が、点々と火のともるように咲いていました。そして、水盤の水に浮いたすいれんの葉に、はちが下りて止まっているのを見ました。

「あのはちは、さっきのはちかしらん。

目をはなさずに見ていると、はちは、しばらくたって、つつじの枝の方へ飛んでいきました。

「やはりそうだわ。水を飲みにきたんでしょう。

0:0033%