フットボールは、あまり坊ちゃんや、お嬢さんたちが、乱暴に取り扱いなさるので、弱りきっていました。どうせ、踏んだり、蹴ったりされるものではありましたけれども、すこしは、自分の身になって考えてみてくれてもいいと思ったのであります。
しかし、ボールが思うようなことは、子供らに考えられるはずがありませんでした。彼らは、きゃっ、きゃっといって、思うぞんぶんにまりを踏んだり、蹴ったりして遊んでいました。まりは、石塊の上をころげたり、土の上を走ったりしました。そして、体じゅうに無数の傷ができていました。
どうかして、子供らの手から、のがれたいものだと思いましたけれども、それは、かなわない望みでありました。夜になると、体じゅうが痛んで、どうすることもできませんでした。まれに雨の降る日だけは、楽々とされたものの、そのかわり、すこし雨が晴れると、水たまりの中へ投げ込まれたり、また、体じゅうを泥で汚されてしまうのでした。雨の日が長くつづけば、つづくほど、その後では、いっそうみんなから、手ひどく取り扱われなければならないので、まりにとっては、雨の降る日さえが、その後のことを考えると、あまりうれしいものではなかったのです。
あるとき、フットボールは、みんなから、残酷なめにあわされるので、ほとんどいたたまらなくなりました。そして、いつも、いつも、こんなひどいめにあわされるなら、革が破れて、はやく、役にたたなくなってしまいたいとまで思いました。
こんなことを思っていましたとき、彼は、力まかせに蹴飛ばされました。そして、やぶの中へ飛び込んでしまいました。まりは、しげった木枝の蔭に隠れてしまったのです。
「まりが見つからないよ。
「どこへいったろう?
子供たちは、おおぜいでやぶの中へはいってきて、まりを探しました。しかし、だれも、ボールがちょっとした、木枝の蔭に隠れていようとは、気づかなかったのであります。