ある夜の姉と弟·Ogawa Mimei

ある夜の姉と弟

あるよのあねとおとうと

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

ある日のこと、義夫は、お母さんにつれられて町へいくと、露店が並んでいました。くつしたや、シャツなどを拡げたのや、バナナを積み上げて、パン、パンと台をたたいているのや、小間物を並べたのや、そうかと思うと、金だらいの中で金魚を泳がしているのや、いろいろでありましたが、あるところへくると、ちょうど自分くらいの男の子が、集まっている店がありました。それは、やどかりのはいった、箱をござの上へ置いて、売っているのでした。やどかりは、小さなはしごの上へ登ったり、たがいに組み打ちをやったり、転げ合ったりしていました。どれも脊中にかわいらしい貝を負っている、歩くときはかにに似た不思議な虫でありました。いったいどこから、持ってきたのだろうかと、義夫は、しばらくお母さんと立ってながめていました。

「あんな大きいのがいるよ。」と、このとき義夫は、目をみはりました。

そのやどかりは大きな白いとげのある貝を負っていました。

「よくあんな大きな貝を負って歩けますね。

「おばさん、こんなのどこにいるの。」と、きいた子供があります。義夫は、自分も心にそう思っていたので、いいことをきいてくれたと思いました。

「この白い大きいのは、小笠原島からきたのですよ。みんな、遠い南の方からきたものばかりです。」と、やどかりを商うおばさんは、いいました。

小笠原といえば、ずっと南のやしの木が茂る熱帯の地であると思いました。

「お母さん、あの爆発した三宅島より、もっと遠いんですね。」と、義夫は、いいました。

「僕、ほしいな。

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