ある夜の星たちの話·Ogawa Mimei

ある夜の星たちの話

あるよのほしたちのはなし

小川 未明(Ogawa Mimei)

intermediatechildren· 1977· 青空文庫 ↗

それは、寒い、寒い冬の夜のことでありました。空は、青々として、研がれた鏡のように澄んでいました。一片の雲すらなく、風も、寒さのために傷んで、すすり泣きするような細い声をたてて吹いている、秋のことでありました。

はるか、遠い、遠い、星の世界から、下の方の地球を見ますと、真っ白に霜に包まれていました。

いつも、ぐるぐるとまわっている水車場の車は止まっていました。また、いつもさらさらといって流れている小川の水も、止まって動きませんでした。みんな寒さのために凍ってしまったのです。そして、田の面には、氷が張っていました。

「地球の上は、しんとしていて、寒そうに見えるな。」と、このとき、星の一つがいいました。

平常は、大空にちらばっている星たちは、めったに話をすることはありません。なんでも、こんなような、寒い冬の晩で、雲もなく、風もあまり吹かないときでなければ、彼らは言葉を交わし合わないのであります。

なんでも、しんとした、澄みわたった夜が、星たちには、いちばん好きなのです。星たちは、騒がしいことは好みませんでした。なぜというに、星の声は、それはそれはかすかなものであったからであります。ちょうど真夜中の一時から、二時ごろにかけてでありました。夜の中でも、いちばんしんとした、寒い刻限でありました。

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