おおかみをだましたおじいさん·Ogawa Mimei

おおかみをだましたおじいさん

おおかみをだましたおじいさん

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

北の国の、寒い晩方のことでありました。

雪がちらちらと降っていました。木の上にも、山の上にも、雪は積もって、あたりは、一面に、真っ白でありました。

おじいさんは、ちょうど、その日の昼時分でありました。山に、息子がいって、炭を焼いていますので、そこへ、米や、芋を持っていってやろうと思いました。

「もう、なくなる時分だのに、なぜ家へもどってこないものか、山の小屋の中で病気でもしているのではなかろうか。」といって、おじいさんは、心配をいたしました。

「どれ、雪がすこし小やみになったから、俺が持っていってやろう。」といって、おじいさんは村から出かけたのでありました。

山へさしかかると、雪は、ますます深く積もっていました。小屋へ着くと、息子は達者で仕事をしていました。

「おまえは、達者でよかった。もう米や、野菜がなくなった時分だのに、帰らないものだから、病気でもしているのではないかと、心配しながらやってきた。」と、おじいさんはいいました。

息子は、たいそう喜びまして、

「私は、明日あたり、村へ帰ってこようと思っていましたのです。」と、おじいさんにお礼をいいました。

それから、二人は、小屋の中でむつまじく語らいました。やがて、だんだん日暮れ近くなったのであります。

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