おかまの唄·Ogawa Mimei

おかまの唄

おかまのうた

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

松林で、聞きなれた鳥の声がしました。窓をあけると、やまがらやしじゅうからが、枝から枝をつたって鳴いていました。

「僕のにがしたやまがらではないかな。

少年が、じっとその姿を見ていました。遠い町で逃がしたのが、どうして、ここまで飛んでこられよう、と思いました。

戦争のさいちゅうで、もし家が焼けたら、かごの中の鳥がかわいそうだといって、自分はかわいいやまがらを逃がしたし、友だちも、おなじ日に、べにすずめを逃がしたのでした。

「君のべにすずめは、南の国へ飛んでいくし、僕のやまがらは、北のふるさとへ帰るだろう。

二人はよろこんで、飛んでいった小鳥を見送ったのでした。

少年は、それからまもなく、お祖父さん、お祖母さんのすんでいられる田舎へ、疎開しました。この古いお家で、お父さんが子供のとき、本を読んだり、字を書いたりなさったのだろう。またお祖父さんは、

「これから、いろいろの鳥が、裏の林へくる。雪が降ると、山鳥もうさぎもくる。そうしたら、捕ってやるぞ。」といわれました。

青々とした木々の葉が、いつのまにか、みごとに赤く、黄色くいろづきました。すこしはなれた畑には、かきの実がたくさんなっていたし、あちらの垣根のすみには、山茶花が、しめった地面の上に散って、いちめん、貝がらをしいたようでした。

小鳥たちがいなくなったと思うと、さあっと、風が林をかける音がして、つづいて、パラパラと、なにかの木の実が落ちる小さな音がしました。

「どんぐりかしらん?

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