ある日、おじいさんはいつものように、小さな手車を引きながら、その上に、くずかごをのせて、裏道を歩いていました。すると、一軒の家から、呼んだのであります。
いってみると、家の中のうす暗い、喫茶店でありました。こわれた道具や、不用のがらくたを買ってくれというのでした。
」といって、おじいさんは、一つ一つ、その品物に目を通しました。
「この植木鉢も、持っていってくださいませんか。」と、おかみさんらしい人がいいました。
それは、粗末だけれど、大きな鉢に植えてある南天であります。もう、幾日も水をやらなかったとみえて、根もとの土は白く乾いていました。紅みがかった、光沢のある葉がついていたのであろうけれど、ほとんど落ちてしまい、また、美しい、ぬれたさんご珠のような実のかたまった房が、ついていたのだろうけれど、それも落ちてしまって、まったく見る影はありませんでした。
「ああ、かわいそうに。」と、おじいさんは、思わずつぶやきました。
これを聞くと、若いおかみさんは、「おじいさん、どうせその木は、だめなんですから、どこかへ捨てて、鉢だけ持っていってくださいな。」と、笑いながらいいました。
このとき、おじいさんはまだ木に命があるかどうかと、まゆをひそめて枝などを折ってしらべていましたが、
「この木が助かるものなら、枯らすのはかわいそうです。」と答えました。
おかみさんは、ただ笑って、だまっていましたが、心の中で、きっとやさしいおじいさんだと思ったでありましょう。それとも、そんなことを思う人でなかったかもしれません。