この港は山の陰になっていましたから、穏やかな、まことにいい港でありました。平常はもとより、たとえ天気のよくないような日であっても、この港の中だけはあまり波も高く立たず、ここにさえ逃れれば安心というので、たくさんな船がみんなこの港の内に集まってきたのであります。
ある日のこと、沖の方がたいへんに荒れたことがありました。沖を航海していたいろいろな船は、みんなこの港を目がけていっしょうけんめいにはいってきました。港の内は諸国の船々でいっぱいになりました。
赤い船や、白い船や、黒い船や檣の三本あるもの、また二本あるもの、長い船やあまり長くないのや、いろいろありました。また旗を立てている船にも、三角の旗や四角の旗や、いくつも旗を立てているのや、ただ一つぎりのやさまざまでありました。また煙突から黒い煙を上げているのもあれば帆船もありまして、それは見るだけでも海の上はにぎやかでありました。
港の人々はみんな海岸に出てながめていました。その中には老人もあれば子供もありました。若者もあれば娘もありました。また子供を負っている母親もあれば、またお嫁さんになったばかりの、髪を美しく結った若い女もありました。
老人はみんなを振り返りながら、