お正月でも、山の中は、毎日寒い風が吹いて、木の枝を鳴らし、雪がちらちらと降って、それはそれはさびしかったのです。
「ほんとうに、お正月がきてもつまらないなあ。」と、からすは、ため息をつきました。
「町の方はにぎやかなのだろう。ひとつ出かけてみようかなあ。」と、しばらく木の枝に止まって、考えていましたが、そのうちに、そう心にきめて、遠い町の方をさして飛んでゆきました。
どこを見ても、雪の野原で真っ白でした。だんだん町が近づくにつれて、道の上に人通りが多くなりました。雪道の上を歩いていくものもあれば、そりに乗っていくものもあります。
また、お正月のご馳走を造るために、魚を運ぶそりもあれば、みんなの喜ぶみかんや、あるいは炭や、薪のようなものや、塩ざけなどを積んでいくそりも見受けられたのでありました。
欲深なからすは、なにを見てもほしいものばかりなので、もしや、このあたりになにか落ちていはしないかと、あたりを見まわしながら、あっちの木、こっちの木とうろうろ飛びまわっていました。
すると、町からすこし離れたところに森があって、そこに一軒のりっぱな家があり、煙突から煙が上っていました。からすは、その森にきて止まると、家の中からは、おいしそうな香いが流れていましたので、からすは、とうとういちばん低い小舎の屋根まで降りてきました。
それは、この家の犬小屋でありました。中には、一ぴきの犬が、わらの上にはらばいになっていましたが、その白と黒のぶち犬を、どこかで見覚えがありましたので、からすは、じろじろと犬の方をながめていました。犬は、みょうなからすと思ったのでしょう。ふいに、「ワン。」といって、からすをおびやかしました。からすは、この瞬間に、犬のことを思い出したのです。