あるところに、性質のちがった兄と弟がありました。父親は死ぬときに、自分の持っている圃を二人に分けてやりました。
兄はどちらかといえば、臆病で、働くことのきらいな人間でありましたが、弟は、どうかして自分の力で働いて、できるだけの仕事をしたいものだと、日ごろから思っていました。
いよいよ父親がなくなってしまいますと、二人は、これから自分で働いて、生活をしなければならなくなりました。あるときのこと、弟は兄に向かって、
「兄さん、私は、お父さんが分けてくだすった圃を売って、その金を持って旅に出て、なにか仕事をして働きたいと思いますが、兄さんはどうなさいますか。」といいました。
兄は、黙って考えていました。
「どうするって、俺には、べつにいい考えがないから、当分こうしているよりしかたがない。おまえは、かってにするがいいが、その金をなくしてしまったら、どうするつもりだ。」と、兄はいいました。
「兄さん、私は、とにかく思ったことをやってみます。そして、その金をなくしてしまったらまた働いて、体をもとでに、つづくかぎりやってみます。」と、弟は答えました。
弟は、ほどなく、その自分に分けてもらった土地を売り払って、旅へ出かけてゆきました。その後に残った兄は、圃に出てくわを取って働いていましたが、もとから働くことが好きでありませんから、たいていは怠けて家にいました。そして、困ったときは、道具などを片端から売って食べていました。
「運は寝て待て。」ということわざがあるから、きっと、そのうちにいいことがまわってくるにちがいないと、兄は信じきっていたのです。