地震のありました、すぐ後のことであります。町には、米や、豆や、麦などがなくなりました。それで、人々は、争って、すこしでも残っているのを買おうとしました。
ある乾物屋では、こんなときにこそ、小舎をそうじして、平常落ちている豆や、小豆などを拾い集めて、売ってしまわなければならぬと思ったのです。主人や女房は、小舎の中をはいて、きれいに、落ちている豆や、小豆を一ところに集めました。それは、かなりたくさんな量があったのです。大きな器の中に入れて、店に出しておきました。
美代子は、外から、家へ帰ると、
「お母さん、いま、町の一軒の乾物屋にたくさん白い豆がありましたから、早く、なくならないうちに買っておきましょう。」といいました。
お母さんも、お父さんも、びっくりしたような顔つきをして、
「ほんとうに豆があったの。それは、なくならないうちに買っておいたほうがいい。はやく、おまえいって、二升ばかり買っておいでなさい。」と、お母さんはいわれました。
美代子は、ふろしきを持って、いそいそと家から出ていったのです。その後で、お父さんと、お母さんとは、話をなさいました。
「よく豆がありましたこと。
「なにを見てきたのか、いまごろそんなものがあろうはずがないさ。
「だって、あの子が、見てきたのですもの、どこかからきたのでしょう。