サーカスの少年·Ogawa Mimei

サーカスの少年

サーカスのしょうねん

小川 未明(Ogawa Mimei)

intermediatechildren· 1977· 青空文庫 ↗

輝かしい夏の日のことでありました。少年が、外で遊んでいますと、花で飾られた、柩をのせた自動車が、往来を走ってゆきました。そして、道の上へ、一枝の白い花を落として去ったのです。

これを見つけた子供たちは、方々から、走り寄りましたが、いちばんはやかった少年が、その花を拾ったのでした。なんという花か、わからなかったけれど、それは、香いの高いみごとな花でありました。

拾われなかった子供たちは、うらやましそうに、その花を見て、残念がりました。

「お葬いの花なんか拾って、縁起がわるいな。」と、一人がいうと、

「いくら、きれいな花でも、拾うもんでないね。」と、他の一人が、あいづちをうちました。

「なんだ、自分たちだって、拾おうと思って、駆けてきたんじゃないか。なにが、花を拾ったって、縁起が悪いもんか……。」と、少年は、大事そうに、その花を持ってゆきました。

しかし、そういわれると、なんだか、いい気持ちがしませんでした。だいいち、仏さまになった人にあげた花を拾っていいものか、考えれば、悪いような気もしたからです。

おじいさんが、柳の木の下で、アイスクリームの屋台を出して、つくねんと、こちらを見て笑っていました。少年は、おじいさんに、このことを聞いてみようと思いました。

「ねえ、おじいさん、お葬式の自動車から落ちた花を拾っても、悪いことはないね?」と、問いました。

おじいさんは、ちょうど、お客もなく、先刻からようすを見ていましたので、なにもかも知っています。

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