小さなすみれは、山の蔭につつましやかに咲いていました。そして、いい香りを放っていました。
すみれは、そこでも、安心をしていることは、できなかったのです。なぜなら、そのすみれをたずねてくるものは、ひとり、美しいちょうや、かわいらしいみつばちばかりではなかったからです。
「ここにも、すみれが咲いていた。とって香りをかいでごらんなさい。いい香りがするから。」と、山に遊びにきた、子供たちはいったのです。
すみれは、自分ほど、不幸なものは、この世の中に、ないと思いました。小さな体で、しかも、ものの蔭に、つつましく咲いているのを、それすら安心ができなかったからです。
「ああ、わたしほど、不しあわせなものはない。」と、すみれは、ため息をしました。
そのとき、そばから、名もない草がいいました。
「すみれさん、あなたは、あんまり美しく生まれてこられたからです。そして、いい香りをもっていなさるからです。私のように、粗末に生まれてきたものは、ちょうや、はちなどというきれいなものに、振り向かれないかわり、まあ、無事といえばいえるのです。どちらがいいかわかったものでありません。そう、歎くにはおよびませんよ。」と、皮肉のようになぐさめるように、いったのでした。
これを聞くと、すみれは、寒い風に、小さな頭を振りながら、