あるところに、まことにやさしい女がありました。女は年ごろになると、水車屋の主人と結婚をしました。
村はずれの、小川にかかっている水車は、朝から晩まで、唄をうたいながらまわっていました。女も主人も、水車といっしょに働きました。
「なんでも働いて、この村の地主さまのように金持ちにならなければだめだ。」と、主人は頭を振りながら、妻をはげますようにいいました。
妻も、そうだと思いました。そして、それよりほかのことをば、考えませんでした。春になると、緑色の空はかすんで見えました。木々には、いろいろの花が咲きました。小鳥は、おもしろそうにこずえにとまってさえずりました。
夏になると、真っ白な雲が屋根の上を流れました。女は、ときどき、それらのうつりかわる自然に対して、ぼんやりながめましたが、
「ぐずぐずしていると、じきに日が暮れてしまう。せっせと働かなけりゃならん。
と、そばから主人に促されると、気づいたように、また、せっせと働きました。
女は、一日、頭から真っ白に粉を浴びて、働いていました。二人は、まだ、楽な日を送らないうちに、主人は、病気にかかりました。そして、その病気は、日に日に、重くなるばかりでした。