ある日、雪のはれた晩がたでした。
「きょうは、義雄さんの家のカルタ会だ。」というので、みんなは喜んでいました。
達夫くんは、おとなりのかね子さんをさそって、いくことになっていました。
入り日が、赤く雲をそめて西にしずみますと、雪のつもった山のかげがまっ黒になって見えました。いよいよ出かける時分には、雪の上がこおって、歩くとさらさらと音がしたのです。
「このあいだ、僕の家のカルタ会でお顔に、すみをぬられなかったのは、かね子さん一人だけだろう。かね子さんは、えらいなあ。」と、達夫くんは今夜また負けて、おしろいやすみをぬられるのかと思うと、なんだか自分はいつも負けて、はずかしい気もちがしました。
「達夫さん、私と組みになりましょうね。私ひとりでたくさん取るからいいわ。あんたは自分の前だけよく見ていらっしゃいね。」と、かね子さんはいいました。
しかし、達夫くんは女なんかからかばわれるのを、名誉とは思わなかったのです。
「僕、カルタには負けるけど、すもうを取ればいちばん強いんだがなあ。」と、歩きながら達夫くんは力みました。
その晩のカルタ会は、なかなかにぎやかだったのです。カルタにつかれた時分、おすしや、あまざけや、みかんや、お菓子などが出ました。それを食べてからあとは、火鉢をかこんでお話に花がさいたのでありました。