どこで笛吹く·Ogawa Mimei

どこで笛吹く

どこでふえふく

小川 未明(Ogawa Mimei)

intermediatechildren· 1976· 青空文庫 ↗

ある田舎に光治という十二歳になる男の子がありました。光治は毎日村の小学校へいっていました。彼は、いたっておとなしい性質で、自分のほうからほかのものに手出しをしてけんかをしたり、悪口をいったりしたことがありません。けれど、どこの学校のどの級にでも、たいてい二、三人は、いじの悪い乱暴者がいるものです。

光治の級にも、やはり木島とか梅沢とか小山とかいう乱暴のいじ悪者がいて、いつも彼らはいっしょになって、自分らのいうことに従わないものをいじめたり、泣かせたりするのでありました。光治は日ごろから、遊びの時間にも、なるたけこれらの三人と顔を合わせないようにしていました。

学校の運動場には大きなさくらの木があって、きれいに花が咲きました。そして花の盛りには、教師も生徒も、その木の下にきて、遊び時間には遊びましたが、それもわずか四、五日の間で、風が吹いて、雨が降ると、花は洗い去られたように、こずえから散ってしまい、世はいつか夏になりました。そうなると、もはやこの木の下にきて遊ぶものがありません。

光治は、その木の下にきたのでありました。そこは運動場の片すみであって、かなたには青々としていねの葉がしげっている田が見え、その間を馬を引いてゆく百姓の姿なども見えたりするのでした。

そのとき思いがけなく、例の木島・梅沢・小山の乱暴者が三人でやってきて、

「やい、こんなところでなにしているんだい、弱虫め、あっちへいって兵隊になれよ。

と、三人は口々にいって、無理に光治を引きたてて連れてゆこうといたしました。

「僕は腹が痛いから、駆けることができない。

と、光治はいいました。

「うそをつけ、腹なんか痛くないんだが、兵隊になるのがいやだから、そんなことをいうんだろう。よし、いやだなんかというなら、みんなでいじめるからそう思え。

「僕は、いやだからいやだというんだ。僕のかってじゃないか、君らは君らで遊びたまえ。

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