なつかしまれた人·Ogawa Mimei

なつかしまれた人

なつかしまれたひと

小川 未明(Ogawa Mimei)

intermediatechildren· 1977· 青空文庫 ↗

町の運輸会社には、たくさんの人たちが働いていました。その中に、勘太というおじいさんがありました。まことに、人のいいおじいさんであって、だれに対してもしんせつであったのであります。

若いものたちがいい争ったりしたときは、いつもおじいさんが中にはいって仲裁をしました。

「まあ、すこしのことでそんなに怒るものでない。ここに働いているものは、いわば兄弟も同じことだ。たがいに力になり、助け合うのがほんとうだのに、争うということはない。すこしくらい腹がたつことがあっても忘れて、仲よくしなければならない。」といいました。

おじいさんに、やさしくいわれると、だれでもなるほどと思わずにはいられませんでした。そして、自分たちのしたことがまちがっていたと気づくのでありました。

おじいさんは、また仲間が、病気にでもかかると、しんせつにしてやりました。自分の家を離れて、他人の中で病気にかかっては、どんなに心細いことだろう、そう思って、できるだけしんせつにしてやったのであります。

こうした、おじいさんのしんせつは、みんなに感じられたので、いつか自分の親のように思ったものもあれば、またいちばん親しい人のごとく考えたものもあったのでした。

「おじいさんの生まれた国は、どこですか。」といって、聞いたものがあります。けれど、おじいさんは、答えずに、ただ遠い国だとばかりいっていました。

また、おじいさんには子供や、身頼りのものがいるかしらんと、そのことを聞いたものもあります。すると、おじいさんは、さびしく笑いながら、

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