町裏を小さな川が流れていました。川というよりは、溝といったほうがあたっているかもしれません。家々で流した水が集まって、一筋の流れをなしているのでありました。
ねずみは、その流れの岸に穴を掘って、もう長い間、そのところにすんでいました。ほかのねずみたちが、みんな家々の天じょう裏や、縁の下などに巣を造っているのに、このねずみばかりは、こうして、外のこんなむさくるしいところに、どうしてすんでいるのだろうという疑いをもたれたのですが、それには子細のあることでした。
この川の淵には、いたるところにごみためがあって、いろいろなものが捨てられるからではありませんでした。ねずみの食べられそうなものは、犬やからすが先にきて、たいていそれを食べてしまうのでありましょう。
ねずみがここにすんだのは、この場所が安全だと思ったのにほかなりませんでした。
それは、ねずみがもっと小さかった時分のことであります。彼は、ほかの友だちといっしょに、やはり、町の一軒の家にすんでいました。ある夜のことでありました。彼は、みんなから離れて、ひとり台所へ出てきました。たなの上には、大根や、芋などがざるの中にいれて、のせてありました。また、戸だなの中には、煮た魚や、豆などがはいっていました。すべてが、敏感なねずみの鼻でわかったのであります。
「人間は、りこうでずるいから、気をつけなければならない。」と、日ごろから聞いていましたから、ねずみは注意を怠りませんでした。
彼は、音をたてないように、戸だなをかじってみようかと思ったが、それよりは、まず無難の、たなの上にのっている芋を食べようと思いました。