ある日、光子さんは庭に出て上をあおぐと、青々とした梅の木の枝に二匹のはちが巣をつくっていました。
「おとなりの勇ちゃんが見つけたら、きっと取ってしまうから、私、知らさないでおくわ。
そう思って見ていますと、一匹ずつかわるがわるどこかへとんでいっては、なにか材料をくわえてきました。そして、一匹がかえってくると、いままで巣にとまって番をしていたのがこんどとんでいくというふうに、二匹は力をあわせてその巣を大きくしようとしていたのです。
そののち、光子さんは毎日梅の木の下に立って、その巣の大きくなるのを見るのがなんとなくたのしみでありました。
「もう、今日はあんなに大きくなった。
しかし、それはほんとうにすこしずつしか大きくならなかったのです。二匹のはちが小さな口にくわえてきた材料を、自分の口から出るつばでかためていくのでありましたから、なかなかたいへんなことです。けれど、はちは、たゆまずうまずに、朝も晩も巣をつくることに、いっしょうけんめいでありました。
ところが、どうしたことか、そのうち巣にとまっているのがいつも一匹であって、もう一匹のすがたが見えなくなったことです。
「どうしたんでしょう?」と、光子さんはしんぱいになりました。
光子さんはお母さんのところへ走っていきました。
「ねえ、お母さん、はちが一匹いないのよ。いつも二匹のがどうしたんでしょうね?」といって、きいたのであります。
「そうね、きっとそのうちにかえってくるでしょう。」と、お母さんにもすぐにはわからなかったのでした。