はまねこ·Ogawa Mimei

はまねこ

はまねこ

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

そこは北のさびしい海岸でありました。秋も末になると、海が荒れて、風は、昼となく夜となく吹いて、岩に打ちあたってくだける波がほえていました。この時分になると、白いかもめがどこからともなく、たくさんこの海岸に集まってきました。そして、波の上をかすめたり、岩に下りたりして、魚を捕ったのであります。

村の子供たちは、砂山の上で遊んでいました。

「はまねこが、今日は、たくさんいるなあ。」と、一人が、おどろいたように目をみはって、沖の方を見ていいました。このへんでは、白いかもめのことを、はまねこ、といっていたのです。

「沖が、荒れるんだろう。」と、ほかの子供が、いいました。

このとき、日は、もう西へはいりかけていました。遠く、その方を見ると、雲の切れめが、金色に光って、ものすごいうちに、くずれかけた悪魔のお城のような美しさがありました。そして、その下に、おおかみのきばのような、とがった嶺があり、もう、そこには、雪がきていて、頭が白くなっていたのであります。

「弓をこしらえて、はまねこを射ろうか?

「はまねこなんか、とったって、たべられはしないや。

「ううん、はまねこは、うまいというぜ。

「はまねこをとると、よくないことがあるというから、だれもとらないのだよ。

「うちのおじいさんがいった。はまねこを殺すと、海があれて、船が、難船するって。

漁がないというんだぜ。

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