町の中で、かごからひばりを出して、みんなに見せながら、あめを売る男がありました。その男を見ると、あそんでいる子供たちは、
「ひばりのおじさんだ。」と、いって、そばへよってきました。
あき地になっている、すこしのひろばへ、かたから、あめの箱と、下げているかごを下ろしました。
「さあ、お坊ちゃんも、おじょうちゃんも、あめを買ってください。ひばりをはなして見せますよ。」と、男は、こしをおろしながら、子供たちの顔をながめました。だいぶあめが売れると、男は、かごのふたをあけて、
「さあ、とべよ。」と、いわぬばかりに、片手を上げて、後さがりをしました。
ひばりは、やがて、ピイチク、ピイチク、なきながら、高く、高く、空へ上がりました。そして、このまま、どこへかとんでいってしまいそうに、見えなくなったが、そのうちおじさんが、ピイ、ピイ、笛を鳴らすと、けんとうを、あやまらずに、えんとつや、たてものの間を分けて、すぐ近くへ下りて、またかごの中へ入ってしまいました。
おじさんは笑いながら、「私のいのちより、大事にしていますよ。」と、いつもいうのでした。
ある日、おじさんは、いつもの場所へきて、年ちゃんや、義ちゃんや、とめ子さんのいる前で、ひばりをかごからはなしたのでした。
ピイチク、ピイチク、となきながら、いつものように、ひばりは、空へ高く、高く、上がっていきました。
このとき、人間の耳には入らなかったけれど、はるかかなたの空で、ピイチク、ピイチクとなき声がしたのであります。