ふるさと·Ogawa Mimei

ふるさと

ふるさと

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

北の故郷を出るときに、二羽の小鳥は、どこへいっても、けっして、ふたりは、はなればなれにならず、たがいに助け合おうと誓いました。すみなれた林や、山や、河や、野原を見捨て、知らぬ他国へ出ることは、これらの小鳥にとっても、冒険にちがいなかったからです。そして、ふたりは、春まだ早い、風の寒い日に高い山を越えました。

いつも、ほんのりとうす紅く、なつかしく見えた、山のかなたの国にきてみると、もはや、そこには、花が咲いていました。吹く風もあたたかく、いろいろの草は、すでに丘に、野原に、緑色に萌えていました。

「こんなに、いい国のあることを、なんで、いままで知らなかったのだろう。」と、ふたりは花の咲きにおっている木にとまったときに、顔を見合って語ったのです。

「なぜ、昔から、あの山を越すといけないといったのだろう。」と、一羽の小鳥が、ふるさとにいる時分に、年とった鳥たちの注意したことに、不思議を抱きました。

「それは、こういうわけなんだ、……もし、いいといったら、私たちはまだ遠い旅がされないのに、早く出かけるから、あの山のかなたは、怖ろしいところだ。あちらへいくと、もう、二度とここへは、帰られないといったにちがいない……。」と、ほかの一羽の小鳥は、いいました。

「ほんとうに、そうなのだ。いつも、みんなが、この国へきて、すめばいいのにな。

ふたりは、年とった鳥たちが、あのさびしい野原や、風の寒い林の中を、いちばんいいと思っているのを笑いました。

それから、あちらの木かげ、こちらの林と、二羽の小鳥は、思い、思いに、飛びまわって、唄をうたっていました。こうするうちに、彼らはだんだんこの土地に慣れたのであります。

「もっと、あちらへいこうよ。」と、一羽が、いいました。

「あまり、人間のたくさんいるところへいくと、あぶなくないか?

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