ペスをさがしに·Ogawa Mimei

ペスをさがしに

ペスをさがしに

小川 未明(Ogawa Mimei)

beginnerchildren· 1977· 青空文庫 ↗

土曜日の晩でありました。

お兄さんも、お姉さんも、お母さんも、食卓のまわりで、いろいろのお話をして、笑っていらしたときに、いちばん小さい政ちゃんが、

「ぼく、きょうペスを見たよ。」と、ふいに、いいました。

すると、みんなは、一時にお話をやめて、政ちゃんの顔を見ました。

「政ちゃん、ほんとうかい。」と、正ちゃんが叫びました。

「ほんとうに、見たよ。」と、政ちゃんは、まじめくさって答えました。

「まあ、逃げてきたんでしょうか?」と、姉さんは、おどろいた顔つきをなさいました。

「ペスなら、逃げてきたんでしょう。よく逃げてこられたものね。」と、お母さんは感心なさいました。

「ペスでない、きっとほかの犬だよ。政ちゃんは、なにを見たのかわかりゃしない。」と、いちばん上の達ちゃんが、いいますと、

「うそかい、ぼく、ほんとうに、見たんだから。」と、政ちゃんは、目をまるくしました。

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